レビュー

穢れた聖地巡礼について:小説レビュー

ストーリー考察:2つの物語

ようこそ遊神ゆうきの歪んだ考察ページへw

ボクはこの小説には2つの大きな話があると考えている。

表の物語である『池田、小林、宝条のファンブック制作』と裏の物語である『六部殺し』

まぁ、誰でも気づくと思うがあえて自分の考えとしてまとめる。

間違ってたときに他の人に迷惑なったら困るからね。

あくまでボクが考えたことであって、他の人とかぶっても違っても人それぞれ。

みんな違ってみんな良い。

池田、小林、宝条のファンブック制作

表のあらすじ

まずは池田の心霊スポット突撃動画からはじまる。霊なんていないと豪語する池田に怖いものはなく、ずんずんと突き進んでいく姿が視聴者にうけてるらしい。

ただ、突撃はすれど心霊スポットについては全く無知の池田。

小林から心霊スポットについて掘り下げたほうが読者が喜ぶと提案される。

小林のこだわるリアリティのあるヤラセの為に、オカルトに詳しいライターの宝条の助けをもらいながら、心霊スポットの謂れや都市伝説をかき集め、ときにはヤラセも入れながら心霊スポットの謂れを作り補強していく三人。

しかし、小林はファンブックの企画を通すために、池田に霊を取り憑かせようと考えていた。宝条が見えていた先生の霊を池田に押し付けて、取り憑かれたYoutuberのファンブックとして話題を作り売ろうとしていたのである。

二人の罠にハマりありもしないモノが見え始める池田。
霊なんていないと言う池田ならどうなってもいいと二人は思っていた。

けれど、池田は心の底で霊を信じていた。ただ、霊の存在を肯定してしまうと、学生時代に好きだった鈴木優子を呪い殺したことになる。それ故どうしても霊を認めたくなかった。

そう吐露した池田の心情を理解した二人は、池田を助けることにする。

無事ファンブックの企画が通り、本になることが決まったあと三人は打ち上げをする。

宝条の父にお祓いをしてもらってスッキリした池田。

鈴木優子に謝罪するため現状を確かめようとしたと二人に話す。そこで、鈴木優子が生きていたことを知る。死んだのは同姓同名の別人だった。
お祓いのときにも、宝条の父のからは霊ではなく、池田の業を払ってもらったという。

一体、俺は何におびえていたんだろうと募る池田。
鈴木優子を呪い殺したいと言い出す。
二人に引かれて、うそうそとごまかすようにいたずら電話の話に切り替える池田。
以前は聞き取れなかった言葉が「あなたの番」だったと言って話が終わる。

ここまでが表の話。

紆余曲折あったけど、ファンブックもできたし、池田も元に戻ったし、なんなら鈴木優子も死んでなくてとりあえずハッピーエンドって感じ。
最低を自称する小林と宝条が、最期に池田を救ってボクはほっこりした。

六部は巡礼の旅を終わらせたくない

裏のあらすじ

六部を殺した者はもちろん、生まれ変わった六部も親から愛されず苦しんでいる。
みんな罪を洗い流すため、巡礼の旅を続けている。
巡礼の旅はとても心地よいもののようで、六部達は巡礼の旅を終わらせたくないらしい。
憎しみにまみれた愚かな人を見つけては引き入れている。
引き入れた人の罪がなくなるまで一緒に巡礼の旅を続けるつもりという事なんだろうか。

聖地は元々神様の居た場所だったよう。
利己的な願いを祈る人の穢れなのか、それとも巡礼者の穢れが溜まったのか、今は穢れてしまって心霊スポットになっている様子。
章のタイトルにもなっている心霊スポットの動画は、再生回数順に提示されている為、時系列は違うんじゃないかとボクは思ってる。
比較的早いタイミングで、池田は輪廻ラブホに行ったのではないだろうか。
そこで死んだ鈴木優子に目をつけられたのではないだろうか。

小林は、ピックアップした動画の心霊スポットにまつわる話が、すべて六部殺しに繋がるとしている。途中で思いついたと言っているが、それは本当に小林の意思だったのか宝条は疑問に思っている。

池田もシングルマザーの母が自殺していて、生まれ変わった六部の可能性がある。
池田が憎しみに身を任せて生きている鈴木優子を殺した場合、その鈴木優子も池田も巡礼の旅に加わることになるのかもしれない。

どこかで恨みを捨てない限り。

六部殺し

六部とは修行者のこと。
全国六十六箇所の寺社に、写経した六十六部のお経を納める旅をしている巡礼の者。

『六部殺し』とは、『こんな晩』とも言い、六部を泊めた夫婦が六部の持つお金欲しさに殺め、そのお金で商売を始め財産を手にいれた夫婦が、子供に「こんな晩だったなぁ、お前が俺を殺したのは」と言われる怪談のこと。

風船男

顔が大きい男がどこかに向かう『風船男』の動画からはじまり、後をついてくる妖怪『べとべとさん』の話へ。べとべとさんは道を譲ると、足音だけが先にすすんで行くという。

実際のべとべとさんは知らないが、この物語では風船男もべとべとさんも旅の途中の六部として暗示されている。

大きな顔や頭が何を表しているのか、優子の独白では脳漿を穢れで満たして大きくなるらしい。

変態小屋

幸江は涼子を憎むあまり、幼い頃夢で見たという神からから涼子を殺す方法を教えてもらう。

夫を奪い、希望の家庭を築いた幸江。彼女の娘がソファから飛び降りをくり返す。死んだ涼子の様にソファから飛び降りる。

耐えられなくなった幸江はマンションに娘を監禁放置し餓死させた。

幸江は今も精神病院に入院している。

小林は、幸江は六部を殺した者、涼子は六部、娘は生まれ変わった六部と考えてると思う。

天国病院

エッセイの作者は、養子ゆえに祖母に疎まれていた。
その祖母が病気になり、死にかける度にお見舞いに駆けつけた。
何度も駆けつけるうちに、彼女は祖母を憎むようになった。
その時、幼い頃夢で追いかけられた大きな顔の死神に会う。
エッセイの作者は祖母に死を囁き続け、終に花火の夜に見送った。
それが15の頃。
その後結婚し、娘が産まれた。
言葉を覚えた娘が花火を見つめながら言った言葉とはなんだったんだろうか。
その後、エッセイの作者は自死している。
この話も六部殺しに当てはめたら、六部は祖母になる。エッセイの作者は殺したほう。
エッセイの作者は祖母から何を奪おうとしたのか、ボクにはよくわからない。
駆けつける為に使った時間?祖母の命?それとも生きる意思?

輪廻ラブホ

輪廻ラブホの逸話と敬一と付き合った女性の二つの話がある。
別々の話のようにも見えるし、ひとつの話にまとめることもできそうで、ボクはちょっと混乱しているので、ここで整理してみたい。

敬一と付き合った女性の話

冒頭にでてくる敬一はおそらく生まれ変わった六部で、子供のときに両親に何かを言っている。
もう記憶もないその所為で両親から疎まれ愛されなかった敬一は、愛を求めるようになる。

途中で輪廻ラブホの話を挟み、名称不明の女性の視点に移る。

この女性は敬一と付き合うことになったが、束縛し重すぎる愛に耐えきれなくなって別れ、敬一はストーカーになる。
このとき、女性の窓につるつるの石が投げつけられれている描写がある。
その後、追い詰められた女性はトラックにはねられて死亡。
この死に方が池田の検索した状況と一致することから、この女性は鈴木優子ではないかと思われる。

女性は巡礼の輪に入ったようで、いろいろな心情や状況を説明する。
その中には、輪廻ラブホのことを指しているような描写がある。

赤ちゃんを抱いた優しい顔の仏像があるお寺。もはや鬼となり果てはこの母のもとに、私は帰ってきた

穢れた聖地巡礼について 227ページ

輪廻ラブホの怪異の『角が生える絵』を指していると思うんだけどどうだろうか。

輪廻ラブホの逸話

動画では、二つの絵を見ると呪われる廃ホテルと紹介されている。
一階では妊婦らしき絵と「げんきなあかちゃんがうまれます」と落書きされている。
元々石が積まれていたらしいが、動画ではなくなっているのか説明されていない。
二階では笑った妊婦らしき絵と「げんきなあなたがうまれます」と落書きされている。
二階の絵の前には小さなつるつるした石がたくさん落ちていると動画で説明されている。

動画で不明な部分は、二〇年以上前に取材した記者の記事で詳細が明らかになった。
その記事にある怪異は四つ。
『赤ちゃんの鳴き声』、『積まれた石』、『角が生える絵』、『石を投げる者』。

その他にもいくつもエピソードがある。

  • 必ず妊娠するホテルの噂。
    その噂の所為で閉業したのではないかと推測されていた。
  • オーナーの妻が敷地内で自殺した。
  • ヤクザがらみの噂。
    オーナーらしき人物がヤクザの噂を流し、廃墟になったホテルの人払いをしているんじゃないかと小林が推測。
  • 新生児の置き去り事件。
    新生児の母親の「生んだのは私だが、私の赤ちゃんではない」ってセリフは、六部の仕返しにあった所為なんじゃないだろうか。

エピソードが多く正直混乱してしまっているが、わからないのは敬一とこのホテルの関係。
二つの話は、どちらもつるつるの小石が出てくる。

付き合っていた女性の住む窓に、敬一は小さくて白いつるつるの石をカツンカツンと投げている。
ラブホ内の2階には、散らばる小さくて丸いつるつるの石と、カツンカツンと石を投げる者の話。

つるつるの石は何かの暗示なのか。

ラブホの2階で石を投げているのは敬一なのか、輪に入った鈴木優子なのか。

置き去りにされた新生児は敬一なのか。

このあたり、ずっと考えていたけれど答えが出ない。

現オーナーが敬一で、2階の絵は死んだ鈴木優子で、敬一が優子に石を投げ続けているなんてことも考えたけれど、つながりがなさすぎて、自分で言うのもなんだけど妄想レベル。

敬一の子として生まれることができるなら、敬一は生きているだろうなぁ。

ここのつながりがわからなくても、物語に影響はないから曖昧なのかもしれない。大事なのは六部の旅は六部達が終わらせたくないと思っていること。巡礼の旅を終わらせない為に、新しい人を巻き込んでいることなんだろう。

この物語の始まり、巡礼の始まりは輪廻ラブホなんじゃないかとボクは思っている。優子が帰ってきたとき、旅を終わらせない為、池田を狙ったのではないのだろうか。

でっちあげ怪談

池田は、宝条の父のお祓いでスッキリして出てくる。その時、宝条の父に鈴木優子ではなく、業を払ったと言われてる。

池田が読んだ記事の鈴木優子は別人で、大学で知り合った鈴木優子は生きていた。

業とは、六部の子としての母を追い詰めたことだろうか。

殺されたのに罪というのはどういうことだろう。わざと殺されるように仕向けたとでも言うのだろうか。わざと殺されて生まれ変わり、その罪を責めるつもりだったのか。それなら業というのもなんとなくわかる。責められた人は自殺してしまうこともあるのだから。

鈴木優子が生きていることがわかると、池田は優子を憎むようなことを言い出す。

動画の停止中に動いていた誰かを見ていた池田は、不自然な憎しみに心を奪われそうになっていた。何者かが小さな憎しみや恨みを増幅しているんだろうか。それは六部達なんじゃないだろうか。

もし、池田が鈴木優子を殺した場合、池田の娘に生まれ変わった優子は池田にその罪を問うのだろう。こんな晩……と。

次はあなたの番とは、池田が次の六部を作る番ということじゃないかと、どうしてもボクは思ってしまう。

ボクも他人を恨むようなことはしないようにしよう。

そうしないと、次はボクの番だ。

タイトルとURLをコピーしました